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正峰公爵は私たちを
交互に見た。
「まだ雪彦も
とわ子さんも在学中だ。
なので、すぐに
結婚ではなくて、
卒業までは許嫁という
かたちでとりあえずは
どうだろう?
卒業したら、結婚
ということで。
とわ子さんはその間、
実家にいてもかわまないし、
我が家に住んでくれても
良いんだよ。
雪彦としては、同じ
屋根の下で早く一緒に
過ごしたいかな??」
正峰公爵がこう言って
茶化すと、雪彦さんは
「父上!!!」って
顔を真っ赤にして。
私も、顔が真っ赤。
それを見て、正峰の
奥様がほほほ、と
笑った。
「まあまあ、そういう
ことはまた詳しく
決めていきましょう。
ほら、せっかく
紅葉も綺麗に色づいて
いるのに、
いつまでも私たちが
ここにいるのは野暮と
いうものだわ。
あとはお二人に
おまかせしましょう。」
え!?
と思ったときには、
みんな、ほほほほ、と
茜の間を出ていって
しまった。
残されたのは、
私と雪彦さんだけ。
私たちはそろりと
顔を見合わせた。
えっ、と、
あの決死の覚悟の
お別れのあとで、
どんな顔をしていれば
いいの!!?
「あの、雪彦さん、」
「・・・なんだか、
すみません。
僕がちゃんと話を
聞いていればよかった
ですよね・・・・」
雪彦さんは恥かしそうに
頭を掻いて、
や、あのっ、
「違う、私が
縁談なんて絶対無理
なんて言ってたから、
こんなことに、」
「や、僕が・・・」
お互いになんだかもう
訳が分からなくて、
「・・・・・・、」
「・・・・・・・・、」
黙る。
だって、えっ、
えっ、え!?
どうしたらいいか
分からなくて、
私はスカートを
ぎゅっと握った。
すると。
「・・・・今日は、
洋装なんですね、
とわ子さん。」
雪彦さんが、
ふわっと笑った。
ひっ、
「そ、そうなの、
父上にプレゼント
されて、」
「いつもの和装も
素敵ですが、
洋装もお似合いですね。」
雪彦さんはこう言うと、
そっと、私の髪を
一筋すくった。
ひっ、
ひっ!?
「雪彦、さんっ、」
「とわ子さん。」
雪彦さんが、
私を真っ直ぐに見つめる。
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