10年前

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 思わず言葉が出た。 「俺たち、なにと闘ってるんですかね……」 「……お前、もう天幕戻って休め」  気に障ったのかと思い横顔を盗み見るが、疲労しか見て取れない。 「では失礼します」  ゆっくりと姿勢を下げて重心を落とし、左手と両膝を使って穴から這い出る。穴から出てもしばらくは同じ姿勢でその場から離れ、木立に紛れてから姿勢を起こす。  数日前からずっと雨が降っている。そのせいで雨衣を着ていても下着までずぶ濡れになっているし、靴の中にも雨水がたまって皮がふやけて痛みすら感じる。 (天幕に戻ったらストーブに当たりながら飯にしよう。着替えたところでまた濡れるし)  そう心に決めた。  宿営地に戻ると―― 「なんだこれ」
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