朝霞比呂と王澤青の出会い

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side:青 高校まで徒歩20分程度、最寄り駅まで徒歩15分、徒歩圏内にスーパーや喫茶店もある、築35年の古めのアパートを借りたのは、戸籍上親に当たる人間と関わり合うことが苦痛だったから。 ユニットバスでも住めば都。 初期費用と最低限の家具家電だけ買うお金をくれた父親には少しだけ感謝している。 今日から高校生活が始まる。私にとっては人生の通過点にしか過ぎない程度の3年だと思っているし、それ以上の何かを求めてなんていない。 学費免除というワードだけで、持ち前の知力を武器にして特待生として入学する。超不良高校らしいけど、不良でもなんでもいい。最低限高卒という文字を、いつか履歴書に書きたいだけ。 「大丈夫、生きていける。」 自分に言い聞かせるように、真新しい制服に袖を通し、鏡の前で自分を鼓舞した。 今日は少し風が強くて、桜の花びらがひらひらと舞い落ちてくる。綺麗だな、なんて思いながら高校までのんびり歩いている。交差点を曲がると、明らかに普通の高校生では無いなって風貌の、ヤンキー達の登校する姿がチラホラと目に入ってきた。 ヤンキーでもちゃんと登校時間守る人いるんだ……何その矛盾……ってつっこみたかった。我慢したけど。多分だけど、入学式で生意気そうな新入生に目をつけて、明日以降なんかするって感じなんだろうけど、私は大人しく空気のような存在として過ごしたい。だから目をつけられたくない。 目をつける基準ってなんだろうな、考えても分からないから、私はその件に関しては考える事を放棄して、真顔で汚すぎる校門をくぐった。
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