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「あれ!?王澤ちゃん!?なんでこんなとこいんの!?」
「……誰だっけ」
「同じクラスの!朝霞比呂!こんな物騒な繁華街、一人で歩いてたら危ねぇって!」
髪の色真っ赤だし、派手な見た目だし、こいつも私になにかやっかみ事でもあるのかな、後でもつけられたのかな、なんて考えていたら。
「あ。それ正樹さんの名刺じゃん。あの人高校生スカウトすんなよー、だめだよ王澤ちゃん、キャバクラは18歳から!」
「……は?」
「あとここ、高校生が歩いてていい道じゃないから!とりあえず大通り出よ!」
「え、ちょっと待って、朝霞君は私に、なんか、なんていうか、何もないの!?」
きょとん、とした顔が犬みたいだった。
なんの事?って本気でわかっていなくて、喧嘩売らないのかとか、やっかみ事ないのかとか、自分でもちょっとパニックになりながら言葉の意味を伝えた。
「俺、そういうのよく分かんないし、別に王澤ちゃんは王澤ちゃんだからよくない?そもそも俺喧嘩とか本当に弱いから!!売らないし!!」
こんな人が、あんな学校にいたんだ。
私の手を引いて、早く大通りでなきゃダメだよって小走りの朝霞君は、私に対する敵意が全く無かった。
「ねえ、その王澤ちゃんっていうのやめて。」
「ん?じゃあ青ちゃん?」
「青でいいよ、私、名字大っ嫌いなんだ。」
「そっか、じゃあ俺の事も比呂って呼んで!これからよろしく!青!」
名字が嫌いだということに触れることも無く、ごく自然に受け入れてくれたのは初めての経験で。
こんな夜に、こんな太陽みたいな人と、私はどうやら友達になったらしい。
「そういえば、なんで比呂はあの繁華街にいたの?」
「うちの組がやってるソープに集金のおつかい頼まれて行ってきた帰り!……あ、俺こう見えても朝霞組の次男坊なんだ……やっぱり嫌?ヤクザの家の子とか……」
「比呂は比呂でしょ?別に、家なんてどうでもいいよ、あんたも高校生のくせに堂々と歩くなっ!」
「俺はもう顔が知れてるからいいの!青は変なところから声かけられたらどうすんの!……てか家どこ?送ってく!」
無免だけど!って単車持ってきた比呂に、若干震えた。
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