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死願う者
この世界から切り離されたい。
夜の街を彷徨い行き着いた先は、中央にあるシンボルの時計塔。有名な建築士が携わったらしいが、興味のない人間にとってはどうでもいい話だ。塔の管理人には差し入れだと言って、言葉巧みに酒をたくさん飲ませた。
手の中にはその戦利品の鍵がある。
カンカンと長い階段を登り――そして、頂上へとたどり着く。塔の窓から、びゅうと冷たい夜風が吹きつけ、胡桃色の長い髪が頬にかかる。
これでもう、解放されるんだ。
“あなたがいると辛気臭いわ”
“家賃待ってほしい?冗談じゃない、夜の仕事でもなんでもやって払えばいいだろ”
“両親がいないなんてかわいそう”
――もう終わり。これでおしまい。
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