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「よく来たねえ」
バス停には、おばあちゃんが待っていた。
ずうっとにこにこしていて、その瞳は見えなかった。
どんよりとした、布団のような雲が、僕の頭の上、どこまでも広がっていた。
ちらちらと、小さな雪が舞い始めた。
「お家へ行こうか」おばあちゃんは言った。「何も心配することはないよ」
僕は、下を向いた。
「まあ、冷たい手だねえ」
僕の手を握ったおばあちゃんが、驚いた後、くすくすと笑った。
足元には、たくさんのクローバーが咲いていた。僕はその中のいくつかを踏んづけてしまっていたのに気付いて、そっと足をどかした。
冷たい風が吹いた。僕の顔に細かい雪が張り付いて、クローバーたちが、小さく揺れた。
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