プロローグ

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閑静な住宅街のとある交差点。 ギリギリ車がすれ違うその交差点は、幹線から外れているため、時折抜け道として使われるほかは、付近の住民が使う以外あまり人気はない。 近くの小学校の通学路として使われているため、朝夕はこどもたちのはしゃぐ声が響くが、それ以外は犬の散歩コースであったり、近所の住民が使用している。 その交差点の手前に、今を盛りと金木犀が芳香を放っている。 千鶴子は、この金木犀の香りが好きだった。 高校への通学路からは外れるが、この季節になるとついつい足を向けてしまう。 金木犀の開花は短い。九月中頃から十月半ばの約一週間、その甘い芳香を放つ。 それ以外は常緑樹であるため、緑を楽しむことは出来るが、この無人の庭は紫陽花やツツジもあり、季節になれば往路はこの道を歩く。 数メートル先からその芳香を堪能し、可憐な小さい花弁を愛でた千鶴子は、ふと視線を前に向けて歩きだそうとした瞬間、それを見つけた。
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