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平和が崩れるとき
広い川の側に、たくさんの動物たちが住んでいました。
例えば、小鳥の親子は一本杉の枝に細い枝で組んだ家を作り、ビーバー夫婦は川にダムのような家を作り、元競走馬のサラブレッドは、町にあった廃材を並べて納屋を作って暮らしています。
時には、隣の家の庭木がうちの敷地に入っているとか、子供の騒ぐ声がうるさいとか、ゴミ掃除をしないから臭いとか。様々なトラブルこそありましたが、みんな幸せな毎日を送っていました。
そんなある日、一人のカラスが息を切らせながら飛んできたのです。
「みんなー大変だー!」
「どうした、カンザブロー?」
元競走馬のコンドコソトレルは、大好物の人参の苗を眺めながら聞き返します。
「悪い狼がこっちにやって来るんだ…さっさと逃げないと!」
「な、なんだってー!?」
裏返った声で叫んだのは元競走馬だけではありませんでした。
バービー夫婦はお互いを見あうと、即座に食事や貴重品だけを持って川へと飛び込み、そのまま川下へと泳ぎ去っていきます。
小鳥の親子もせっかくの家を捨てて大空へと飛び立ち、カラスも大事な光る石を咥えて立ち去っていきます。その行動を見ていた猫の姉妹も、家に蓄えていた食料を袋に詰めて早足でその場から避難し、ヤギのおじいさんも、オロオロと周囲を眺めると、覚束ない足取りで土手を走り抜けていきます。
元競走馬のコンドコソトレルが納屋代わりにしていた廃材を解体していると、まだ広場には住人が残っていることに気が付きました。
「速く逃げないと、狼に連れ去られるぞ」
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