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目が覚めたわしは自分がどこにおるんか解らんかったが、てこてこと歩いてくる懐かしい姿に目を細める。
「迎えはやっぱりばあちゃんやったんやな」
「ばぁで悪いなぁ、けどあんたはばあちゃん子やったでえぇやろ?」
「せやなぁ……」
「あんたもえらいしわくちゃになったなぁ」
「そらわしもデカイ孫がようさん増えたでなぁ」
「ようさんおるんならちゃんと綺麗に片付けしてきたったんか?」
「いや?……わしはばあちゃんと違って綺麗好きやないから、ようさんゴミ置いてきたわ」
「……せやなぁ、そんなばばちぃもん握りしめてきて、アホちゃうか?」
祖母に言われて初めて自分が両手で何か握りしめていることに気が付き目をやると、例のニット帽が手の中にあった。
「……えんや。これは"だんしゃりしゃり"や」
──── 幼き頃に祖母に断捨離と言われて何故か『だんしゃり、だんしゃり、だんだんしゃり』と"だんしゃりしゃり"の歌を作ったのを思い出し口に出す。
よく解らん歌、祖母が笑いながら聞いてくれた歌。 ──── 祖母の葬儀に泣きながら口ずさんだ歌……。
ボケても忘れなかった。
わしのばあちゃんへの感謝。
ずっと握りしめてきた感情
今、ばあちゃんに受け取ってもらおう。
手を繋ぐことはないが、二人揃って丸くなった背を並べて歩いていく────。
綺麗な何もない道を
ずっとずーっと……
進んでいく────。
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