間違い電話

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あの日から毎日決まった時間に電話がかかってくる。 オレが「もしもし」と言って、 相手が決まって「間違えました。すみません!」と言って切る。 しばらくそんな事が続いていた。 こうなってくると間違え電話の主に俄然(がぜん)興味が沸いてくる。 今日は「もしもし」の後に話しかけてみる事にした。 「今日は、少し寒いね」 「――――!」 電話の向こうで息を飲むのが分かった。 いきなり話しかけたからびっくりしたのだろう。 ちょっとしたイタズラが成功したようなそんな気分になった。 「は、はいっ寒いです!」 「くすっ」 ガチガチに緊張しているのが見えなくても分かる。 何をそんなに緊張する事があるのか、可笑しくて少し笑ってしまった。 相手は電話を切らずに黙っている。 「――じゃあ、また明日」 そう言ってオレは通話を終えた。 そしてまた、くすりと笑った。
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