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「ねえねえ、起きて。雪がたくさん積もってるわ」
「本当だ……あいつがいたら喜んでただろうなあ」
「そうね。きっとお気に入りの靴を履いて外に飛び出していったでしょうね」
夫婦は真っ白な窓の外を眺めた。
ふと何かに気づき、顔を見合わせる。そして二人は外へ飛び出した。
「あいつの足あとだ……」
「嘘みたい……こんなに走り回って……」
二人はしばらくその足あとを眺めていた。
ふと、夫が家に戻って何かを持っくる。
「あいつ、写真撮って欲しいんじゃないかな? ほら」
それは、息子の誕生日にプレゼントするはずのカメラだった。
「そうね、今日は六回目の誕生日だものね」
玄関には、少しずつ大きくなる男の子ともみの木が並んで写る写真が五枚、飾ってあった。
「よし、撮るぞ」
隣に誰もいないもみの木にカメラを向けて、二人は微笑む。
それから今度は地面にカメラを向け直し、何枚も何枚も写真を撮った。
「あいつ、俺たちが落ち込んでるもんだから、元気づけようとしたんじゃないか?」
「そうかもね。こんなに楽しんでますよって、教えてくれたのかもね」
日が高くなり、気温も上がってくる。
二人は、明日にはなくなってしまうであろうその足あとを、いつまでも眺めていた。
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