第1章「あの事件、語る男たち」

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 □    ランチタイムは、心が解放されるものである。通常の業務とあらゆる期日と、やっておくと良さそうなものまで含めると仕事はいくらでもある。通勤から業務まで、ぎゅうぎゅう詰めの中に訪れるオアシスみたいなものだ。  今日もそこそこに美味しいランチと限定フィギュアを入手するという、ステキ時間を堪能した後藤は、足取りも軽くオフィスまで戻ってきた。 「やった! 限定十個生産の激レアフィギュア! これは届くのが待ちきれないなー、参ったなー、笑いが止まらん。ぐふふふ……あれ? 米さん? どうしたんですか? 今日って打ち合わせの予定とか、ありましたっけ?」  後藤がはた、と立ち止まった先には痩せた男がボサッと立っている。この米と呼ばれた男は後藤の登場に、少々大袈裟なくらいにビクッと肩を跳ね引き攣ったような作り笑いを顔面に貼り付けた。 「あっ、いえ……先ほど、垣田リーダーに呼ばれて……」 「ほう! 垣田隊長どのからの呼び出しですか、そりゃまたなにやらかしたんです? あっ、先日のコーディングミス? バレた? ばれちゃったの?」
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