第1章「あの事件、語る男たち」

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「つまり、花崎さんはご結婚が決まったという、そういうことですか……そう、そういうこと……はあ……」  わかりやすい。市山と後藤は、呆然とする笹を見てヒソヒソと聞こえない風の会話を続ける。 「ひそひそ(相当ショックを受けてるじゃない、本気だったんじゃないの、あの様子じゃ)」 「ひそひそ(まじっすか。いやまじっすか、ガチで目の前に失恋直後男子、マジぱねえっすよ、インスタに挙げてもいいっすか。ダメか、映えないわ)」 「……全部、聞こえてるんだけどなあ。……はあ……」  たまに顔を出せば遊ばれるかいじられる、と笹が肩をさらに落としたところで、ドアが勢いよく開かれた。 「あ、垣田リーダー、おかえりなさい」  ヒールの音が、足早に戻ってきていた。
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