第1章「あの事件、語る男たち」

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「はい……酒さんに完了メールを送ることになってるので、それが終わったら、行きます……篠原さん、先に行ってくれていいですよ」  市山もまた女子である。ただし、あまり服装などに気を遣うタイプではないらしく、メガネにボーダーのトップスが多く見られる。 「ありがとう、でも垣田リーダーが戻ってこないとね」  少し、首をかしげて篠原が言った。 「ああ、遅いですね。打ち合わせ。そんなに時間がかかるような内容でしたっけ」 「うーん、新サービスのプラットフォーム作成、だけどプロジェクト自体はもう三か月前から準備してるわけだし、この期に及んで詰めるようなことって……ないと思うんだけどなあ」  篠原が首を傾げる背後でドアが開き、明るい声が近づいてきた。スマホで話しながら、オフィスには似つかわしくない華やかな人物が入ってきた。 「はーい、来週の日曜日、午後二時で決まりだね。うん、大丈夫よ、楽しみだねーっ、今度は朝からホテルからのスタートだもん、お料理も楽しみーっ、はーい、じゃあねー」  笑顔が満開、といった具合に足取りも軽く席についたのは、花崎かおり。ピンク、ピンク、ピンクのコーディネートは彼女の肌艶の良さもあり、春を運んできたかのようである。
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