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「え、ちょっ、花崎さん……、……行っちゃった」
「無駄ですよ、篠原さん。今の花崎さんは、なにを言っても。ようやく念願の結婚にこぎ付けそうなんで、舞い上がっちゃってますから。今回のプロジェクトだって、あの調子じゃしほりちゃんに任せっきりだと思いますよ」
ため息と苛立ちまじりに市山が毒づいたのに、篠原も困り顔を浮かべた。
「まあねえ、しほりちゃんがあんまり深く考え込まないで仕事をしてくれる性格だから、問題はないんだろうけどね」
「篠原さん、お人よしが過ぎますよ。あんな状態で仕事をされてたら、チームの士気に関わります」
「はは、まあ、ね。言いたいことはわかるんだけど、しばらく様子を見ましょう? 婚約しても、すぐにお式やなんやってわけじゃないじゃない? きっと今は舞い上がってるけど、準備も大変になってくるころには落ち着いてくるんじゃないかな」
「はあ、まあ……」
穏やかに諭す篠原に、市山は不満げにながらも頷いた。そうこうしていると今度は先ほどとは異なる勢いでドアが開いた。カツカツと鳴るヒール、肩下までの髪を揺らしながら、現れたのはいかにもできる女スーツ姿の垣田マネージャーだった。
「あーもう、つっかれたー!」
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