11人が本棚に入れています
本棚に追加
まだ若い女性だが、その風貌、シャープなスタイルと能力の高さと共に、このITサポートチームのマネージャー職についていた。
「お疲れ様です、垣田リーダー。どうでしたか? 打ち合わせは」
「お疲れ様です、リーダー。随分と長かったですね」
篠原と市山が声をかけるが、垣田はまるで疲労感を表すように勢いよく自席についた。
「どうもこうもないよー。ったく、あの酒やろーめ。酒米の山田錦に失礼だっての、名前詐欺だ、訴えてやりたい!」
どうやらクライアント側の担当者、山田錦に何かムカつくようなことがあったらしい。山田錦はウォルフィの正社員であり、外部委託チームである垣田らをまとめる立場にいるのだが……
「でも、山田さんの苗字は仕方ないんじゃないですか、代々そういう苗字なんだし、どうせなら錦って名前の方に問題が」
「篠原さん、そういう問題じゃない気がします」
垣田は盛大なため息と共に、デスクに肘をついて頭を抱えた。
「もー、あいつ、あの知ったかぶりバカクライアント! 絶対あいつ、いつか精神的にミンチにしてドラム缶詰めにして表に山田錦、醸造中ってラベルを貼ってやりたい!」
とても物騒な発言だが、篠原はなにやら真面目な顔で眉を寄せた。
最初のコメントを投稿しよう!