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第1章「あの事件、語る男たち」
コンクリートが全ての光を吸い込んだような暗さの部屋に、パイプ椅子が二脚ある。今その暗さに、ぴったりな男が入ってきた。
肉のない背名を丸めた男だ。
後ろにつづくスーツの男に促されるままにオドオドと小股に歩き、鉄製のドアが重い音を立てて閉じた。
痩せた男は、おずおずと自信なさげにあたりを伺う。
「あのぅ……あっ、どうも。僕の話を聞きたいって、言われたんですけど……困ったな。僕にはそんなに詳しいことはわからないんですよ。あの時なにが起きてたなんて、本人たちにしかわからないっていうか……本人たちに聞いてくださいよ」
後から入ってきたスーツの男は、痩身に似つかわしくない大袈裟な動作でパイプ椅子の1つに腰掛けて足を組んだ。
「はっは! ええ、まあね。当事者のみなさんからお聞きしたいのは山々なんですが。まずはあなたから伺いたいんです。あなたは、フリーランスでデザインとかを請け負っている、と聞きました。その関係で色々伺いたいと思いましてね。お話しいただけませんか」
大きくはっきりとした声に、痩せた男はずり落ちそうなメガネを引き上げて、引き連れたような愛想笑いを浮かべた。
「そうですね、えーっとではまず、僕が彼女たちと関わっていたプロジェクトからお話しします。株式会社ウォルフィっていう会社なんですけど、女性が働き続けるにはまあ、色々とあるでしょ。そういうのをサポートするウェブサービスを作ろうとしていたんです。ウォルフィって、すっごく発音がしにくい会社なんですけどね。最初は普通のプロジェクトだったんです。ウォルフィにはIT部門って言っても、ITサポートを外部委託してて。サンスライスって会社から出向してきた女性だらけのチームが運用保守を任されてる、っていう形なんです。女性が作る女性のための、っていうのがモットーの会社だから、ウォルフィは」
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