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第1話 大地とニケ
「これで俺も天涯孤独の身か……」
疲れた身体を倒れ込むようにしてベッドに投げだす。
両親を幼い頃に亡くした俺を育ててくれた祖父が他界してから十日。
葬儀や諸々の手続きを終えたのが、つい二時間前のことだ。
「何だか茫然としているうちに十日間が過ぎちゃったな……」
スマホを取り出すと未読メールの件数に目が留まる。
十五件か、いつの間に溜まったんだ。
メールをチェックすると就職活動先の企業から連絡が入っていた。
結果はこれまでと同じだ。
朝倉大地様 ――――
俺の名前から始まる書き出し。
続くのはどこの企業も似たり寄ったりのお断りの文章だ。
「落ちたか……」
自分の沈んだ声が耳に響く。
声は沈んでいるが落胆していない。
ただ、大学の友人と顔を合わせるのが益々嫌になっただけだ。
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