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目をつぶると大学の友人たちの優越感に満ちた顔が脳裏をよぎる。
『奨学金を返さないとならないんだろ? どこでもいいから就職しちゃえよ』
『やりたい事よりも、先ずは就職することを優先しろよ』
『就職浪人じゃ、彼女逃げちゃうよ』
『高望みするからだろ。俺なんてメチャクチャ妥協したんだぜ』
奨学金には感謝している。
この制度がなかったら大学なんて考えられなかった。
やりたい事なんてなかった。
それを悟られるのが嫌で「マスコミ関係の仕事に就きたい」などと口にしていただけだ。
彼女なんていねえよ。
アルバイト先で仲良くなった女子高生を勝手に彼女ってことにしてただけだよ。
高望みなんてしちゃいない。
ただ、じいちゃんの喜ぶ顔が見たくて少しでもいい会社に入ろうとしただけだ。
心の内で愚痴がこぼれた。
「結局、最後までじいちゃんを喜ばせてやれなかったな」
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