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祖父の優しい笑顔と声が蘇る。
『優しい子に育ってくれて嬉しいよ。お前はワシの自慢の孫だ』
『まだ若いんだから焦る必要なんてない。ゆっくりと自分のやりたいことを探しなさい』
「ミャー」
俺の腹の上にモフモフの毛玉が飛び乗った。
生後十か月になる愛猫のニケだ。
「ニケ」
「ミャ」
「そうだな、お前がいたな」
「ゴロゴロ」
長毛種独特の手触りの良い長い毛をなでると甘えた声を上げた。
「落ち込んでいても仕方がない。昼飯を食べたら就職活動の続きだ」
己を鼓舞してベッドに半身を起こす。
そのとき右手に何かが触れた。
それは祖父の遺品を整理していたときに出てきた木製の小箱。
「そう言えば、古い指輪が入っていたな」
木箱を開けるとおよそ女性が身に付けなさそうな古臭いデザインの武骨な指輪が三つ並んでいた。
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