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指輪といっても宝石の類は付いておらず、三つとも印章が彫られている。
一つは、小さな四つの印章が連なって大きな一つの印章を形作っていた。
残りの二つは、どちらも印章が真っ二つに割れたような形でとても似通ったデザインである。
「もしかして、この二つは対になっているのか?」
取り出した二つの指輪重ねると印章部分がピタリ合った。
俺は何の気なしにその二つの指輪を左手の中指にはめてみると、まるであつらえたようにはまった。
「ぴったりだ」
「ミャー」
腹の上から飛び降りたニケが木箱に残された指輪をくわえた。
不味い、飲み込んだりしたら大変だ。
「ニケ、それはダメだ」
指輪を取り戻そうと左手を伸ばすと、ニケのくわえていた指輪と俺の左手の指輪が微かに触れた。
小さな金属音が響く。
次の瞬間、俺の頬を暖かな風がなでた。
夏草の匂いが鼻腔をくすぐる。
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