クボさんの日常

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クボさんの日常

  改めて見るクボさんの容姿は、今時の女の子というには地味に過ぎる印象だった。それはぼくの事前予想が邪だったからだけだが、普通に過ぎるという印象だった。ぼくの職場の事務の女の子でもおかしくないような子だ。  実はぼくは、心療内科でカウンセリングを受けている。カウンセラーの先生は女性で、いかにも臨床心理の道に進んだんだなという感じのひとだ。  今、話相手代行をしてくれようとしている久保さんは、勿論カウンセリングをしてくれはしない。ぼくの話相手として、指定された場所に来たというだけだった。普通の女の子でなんら問題は無い。ただ、こういった仕事をしている以上、何かしらの話術であるとか、テクニックは持っているものと思っていた。 「あたし、このお仕事、今日が初めてで」 「え、そうなんですか?」 「はい、今のお仕事だけでは収入が少し足りないので、応募してみたら採用になって……。人とお話をするのは好きなんです」  随分と乱暴な採用ぶりだなと思ったけれど、そこは言わないでおいた。
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