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「な、なんじゃこりゃぁぁぁ!!!」
鞄から取り出した封筒を開け、乾杏子はジーパン刑事の死に際の如く、イスから立ち上がり盛大に叫んだ。
「ちょっと、アンコ。なんちゅう声出すんよ。私まで頭おかしいと思われるやんか」
社食で一緒にアジフライ定食を食べていた同僚の海老原小梅の注意も杏子の耳には届いていなかった。
「……嘘やろ。最悪や。どないしよう」
力が抜けたようにイスにすとんとお尻を落とし、杏子は呆然としていた。
「一体どないしたんよ。エロ動画見過ぎて架空請求でもきた?」
笑いながら、小梅は暢気に訊ねた。
「……あたし、訴えられるかもしれん」
「は? 訴えられる? 一体誰によ」
「妻……やって。貫ちゃんの」
「はあ!? 貫ちゃんってあんたの彼氏の? プロポーズされたって言うてへんかった?」
「そうや。誕生日の日に「結婚したい」って言われたで。せやのに、白井貫太の妻が慰謝料請求しますやって。期限内に支払わない場合は法的手段を取るかもやって。どないしよぉぉぉ!!!」
「ええ!? 嘘やろ? ほんで金額は?」
「300万!!」
「「詰んだー!!!」」
驚愕する二人の声が狭い食堂に響き渡った。
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