ダチュラ ーXmas ver.―

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 お互いの誕生日もクリスマスもバレンタインも一緒に過ごした。唯一、貫太の家に行ったことはなかったが、仕事が忙しく不規則になりがちなのでまだ実家で暮らしているという説明に納得していた。彼が一人暮らしをしている自分の家に来てくれることに何の違和感も抱かなかった。  いつか一緒に暮らして自分が支えられたら。秘かに夢を見たりもしていた。  恋人としては少し物足りないところもあったが、夫にするなら最良の相手だろう。三十を過ぎてもあまり結婚願望がなかった杏子にとって、初めて将来を想像した相手だった。  まさか、妻子持ちだったなんて……。通りで家庭的(、、、)なわけだ。  杏子は途方に暮れた。大手でもない普通のメーカーでOLをしている自分に300万円なんて大金は用意できそうにない。かといって、事情が事情なので、親に借りるわけにもいかない。  闇金で借金からの風俗ルートという漫画みたいな話が頭に浮かぶ。 「大丈夫やって。既婚者って知らんかったんやし、あんたも被害者やって」  楽天的な小梅に何度となく励まされてきた杏子だったが、今回ばかりは凹んだ心がなかなか復活しそうになかった。
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