一章〜旅の始まり⑦

1/1
前へ
/12ページ
次へ

一章〜旅の始まり⑦

       ✴︎11#‥方向転換       ※※※※※※※※※※※  ここはグレイルーズ国内にある、サンバの街の近隣の森の中。リッツとタツキは歩きながら話をしていた。 「本当に魔獣はいないみてぇだな。いるのは獣と小動物ぐらいか」 「タツキ……何か退屈そうだね」  リッツがそう言うとタツキは溜息をつき、 「ああ。前に召喚された時と世界観が違いすぎてな」 「世界観が違うって……昔はどうだったの?」  不思議そうにリッツはタツキを見た。 「そうだな。この辺は、なんとなく見覚えがある。昔この辺りには魔獣や怪鳥などがいて、ここを通る者を襲っていた」 「そうなんですね。でも何でだろう?」 「さあ、リッツが知らねぇのに、俺が知るわけがないだろう。流石にな……」  タツキはそう言い、ふと何かを思いつき、 「リッツ。直接オパールに行こうと思ってたんだが。すまない、気が変わった!」 「タツキ。どうしたの?」  リッツがそう言うとタツキはバッグから地図を取り出し、そのままの態勢で広げた。  そしてタツキは地図を見ながら、 「ここから近い国の城下街は、ラウズハープが近いな」 「もしかしてそこに行くの?」 「ああ。後にしようと思っていたが、少しこの世界の事を知りたくなった」  そう言いタツキはラウズハープがあるであろう方角に視線を向けた。 「僕は構わないけど。タツキは大丈夫なの?」 「……多分、大丈夫だと思う。連絡しとけばな」 「連絡って誰に?」  そう言われタツキはリッツの方を向くと、 「俺の仲間だ。オパール付近で落ち合う約束をしている」 「仲間って……まさか女の人ですか?」  リッツがそう言うとタツキは、フゥーと息を漏らし、 「リッツ。そうだったら良いんだが。……残念なことに男だ」  それを聞きリッツは心の中で、ほっと胸をなでおろした。 「タツキの仲間か、どんな人だろう。やっぱり異世界の人なのかなぁ?」 「いや違う。ヒューマンで、確かホワイトガーデンのルーンバルス城で、元は働いていたと言っていた」 「そっかぁ。僕は、ヒューマンとは一度も会った事がないから、会うのが楽しみだなぁ」  そうリッツが言うとタツキは首を傾げ、 「一度もって……そこまで国は閉鎖的なのか?」 「ううん。そういうわけじゃないんだ。国と国の間に境界線や関所はあるけど、さほど厳しいわけじゃない」 「ん?それって、どういう事なんだ」 「過去に何があったのか良く分からないけど」  今まで見聞きしてきた事を、リッツは思い出しながら、 「お互いの国の人たちが警戒してるらしく、よほど興味がある人とか以外は、他国には寄り付かないらしいよ」  それを聞きタツキは俯き、今と昔の事を比較しながら考えてみた。 (昔は、よほど他種族との交流がない街や村でない限り、他の種族の者たちは自由に行き来していた。だが今は……) 「……タツキ。急に黙ってどうしたの?」 「あ、ああ、すまない。ちょっと考え事をしていた。さて、ここで立ち止まって話をしていてもしょうがない」  そう言いタツキはリッツを見ると、 「とりあえず街か村まで行き一晩やすんだら、そのままラウズハープを目指そうと思う」 「そうなるとボカロ村が、最もラウズハープに近いけど。今から向かって夜までに着かないといけないから……ルンバダの街が良いかも」 「ルンバダか。まだ街が残っていたんだな」  そう言うとタツキは微かに笑みを浮かべた。 「結構あの街は古いみたいだけど、200年前ってどんなだったの?」 「そうだな。その事については、ルンバダに着いて街の様子を見てからの方が良いかもな」  タツキがそう言うとリッツはコクリと首を縦に振った。  そしてリッツとタツキはその場を立ち去り、話をしながらルンバダの街へと向かった。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加