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一章〜旅の始まり④
✴︎8#‥魔石の通信機を作る
※※※※※※※※※※
タツキは青、黄色、白と3個の魔石を使い箱型の通信機を作り始めた。
それをリッツは食い入るように見ていた。
(すごい!強いだけじゃなく、手も器用なんだぁ。いつかタツキのようになりたいけど。そうだなぁ……僕でも出来そうな事って?)
そう考えながら、
(物をつくる……発明!そうだ。それなら本とか読んで考えながら、色んな物をつくり出す事ができる!)
そうリッツが思っていると、タツキは手に収まるくらいの小さな箱を3個つくり終え、魔石をはめ込んでいった。
そしてタツキは、もの作りキッドの中から虹色の布を出すと、その箱の上に覆い被せ、目の前のメニュー画面を操作し始めた。
「タツキ。その布って何なの?綺麗だけど」
そう言われタツキは操作しながら、
「この布か。なんて説明したらいい?アルケミィクロスっていう名前なんだがなぁ」
タツキはどう説明するか考えた後、
「そうだな。この世界にあるか分からないが、錬金という言葉を知ってるか?」
「錬金……そういえば、確か本に魔道具などを作る為に、必要な技術的な物だって書いてあった気がする」
「そうか。そうなると、今でもまだ錬金術は、この世界にあるって事だな」
タツキがそう言うとリッツは首を横に振り、
「ううん。昔は錬金術を使える者が結構いたみたいだけど。今はその技術を有する者があまり存在しないらしいんだ」
「なるほどなぁ。そうなると一般的には、あまり知られてないって事か」
リッツは頷くと、ふとタツキが言った言葉が気になり、
「そういえば今『今でもまだ』って言ったけど。さっきもマインの森で『昔』って言ってたよね。それってどういう事?」
リッツにそう聞かれタツキは自分の口の軽さに頭を抱えた。
(しまった!隠そうとしても口が滑っちまう。どう誤魔化す?……いや、今さら無理だろうなぁ)
「タツキ、言えない事なの?」
「いや、そういうわけじゃない。ふぅ、どうもお前の前だと口が滑る。それに、流石に誤魔化し切れそうにないみてぇだしな」
そう言うとタツキはリッツに、自分が約200年前にも、この世界に来た事を話した。
「タツキが過去にも、この世界に……。でも、僕が読んだ本には、200年前に異世界の人が召喚されたって事については、何処にも書いてなかったけど?」
「記載されてなかった?……なるほどなぁ。恐らく隠したんだろう。あんな事があったからな」
そう言うとタツキは、その時の事を思い出し辛そうな表情を浮かべ、テーブルの一点を見つめていた。
「隠したって……。過去に何かあったんですか?」
「ああ、あった。だが悪い、言えねぇ。それに、200年前に起きた事を書き記さなかったって事は、あの事を公にしたくなかったんだろうからな」
「そうか。……分かりました!その事については聞きません。でも、何で2度も召喚されたんですか?」
「さぁな。それは俺にも分からねぇ。だが、ある場所に行けば、その事について分かるかもしれない」
「ある場所って、もしかして神々の塔の事かな?」
「……ああ、そうだが。その事も本で知ったのか?」
「はい。異世界や異世界の人たちの事に興味があったので……それに僕は、本当は召喚魔導師になりたかったんです」
「そうか。だが何でならなかったんだ?」
「親に反対されたからです。でも、今だから分かるんですが。召喚魔導師になるには、相当な能力と知識、それと遺伝子的なものが必要になるらしいので」
「そういう事か。……てか、そろそろ完成させねぇとな」
そう言うとタツキは再びメニュー画面を操作し始めた。
するとリッツは目を輝かせ、タツキの手元を見ながら完成するのを待った。
(早く完成しないかなぁ。でも……)
「ねぇタツキ。布を被せただけで完成するの?」
「いや、それだけじゃ作れない。今メニュー画面で通信機を完成させる為の設定をしてる。その後、まだやる事はあるがな」
タツキは設定を終え、魔石がはめ込まれた箱を覆っているアルケミィクロスの上に、右手を翳し魔力を注ぐと虹色の光を放った。
しばらくするとその光は消え、タツキは魔石がはめ込まれた箱から、アルケミィクロスを取り除いた。
「とりあえずは完成した。だが1つじゃ成功したか分からねぇ」
そう言うとタツキは、同じ工程で更に2つ完成させ、計3個つくった。
「これで完成なんですね。楽しみだなぁ」
「ああ。だが、まだ分からねぇ。使ってみないとな」
そう言うとタツキは、黄色の魔石がついている方をリッツに渡し、青色の魔石がついている方を自分が手にした。
「じゃ試しに、会話してみるとするか」
タツキがそう言うとリッツは頷いた。
「……そうだ!タツキ、使い方は?」
「おっと、そうだったな。俺の真似をしてみろ」
そう言いながらタツキは左手で箱型の通信機を持つと、リッツも同じように持った。
それを確認するとタツキは、青色の魔石に右手を翳し呪文を唱えた後、リッツの名前を言った。
すると、リッツが持つ通信機がブルブルと小刻みにふるえ魔石が青い光を放った。
「黄色の魔石が青く光った!?それにブルブルってふるえてるし、これってどうなってるの?」
「仕組みは俺も良く分からない。だが、相手の通信機の魔石から送信された魔力を、自分の持っている通信機の魔石が受信し反応するらしい」
「そうなのかぁ。すごい技術ですね」
「そうか?……あっ、そうだった。ちなみにこの通信機の各魔石には一人一人の名前が設定してある」
「名前って……何でする必要があるんですか?」
「それは自分以外、使用する事が出来ないようにする為と、受信した時に誰からの送信か分かるようにだ」
「なるほどです。それで、どうすれば会話ができるんですか?」
「その方法はな。通信機が震え光を放ったら、魔石に手を添えながら話せばいい」
タツキがそう言うとリッツは、その場から少し離れ、言われた通りに魔石に手を添え小声で話してみた。
「タツキ、聞こえる?」
“ああ、聞こえる”
「ヤッター!成功ですね」
そう言うと、少し離れた場所で椅子に座っているタツキに向け、リッツはガッツポーズをした。
それを見たタツキも「ヨシッ!」と言い、ガッツポーズをした。
その後タツキがいるテーブルの方に来るとリッツは椅子に座った。
「これで完成だが。この通信機は作った者が名前を決め登録していいらしい。リッツ、何がいいと思う?」
「この通信機は僕が作った物じゃないし。タツキが決めた方がいいと思う」
「そうか、分かった。だがそうなると、何て名前がいいかだよな」
そう言いタツキはどんな名前にするか考え始めた。
(名前か……そうだなぁ。俺が思いつく名前は、あれしかない。
だが、アニメ『うち魔』の『マジックⅭフォン』って、そのままの名前じゃ、流石にまずいよな。
そうなると……あっ!そうか。ここから名前を変えればいい)
そう思いリッツを見ると、タツキは口を開き話し出した。
「この通信機の名前なんだが『マジカルSフォーン』なんてどうだ?」
「……。マジカルSフォーン……。タツキがそれでいいなら、僕はたぶん大丈夫だと思うよ」
そう言いながらリッツは苦笑し、額から一滴の汗がほほを伝い流れ落ちた。
(流石に『そのセンスは』って、言えるわけないよなぁ)
「ん?リッツ。なんか無理してないか」
「む、無理はしてないよ。それよりもお腹すいてきたし、早く登録して食堂に行こう!」
「そうだな。そろそろ、夕食の時間だしな」
そう言うとタツキはメニュー画面を操作し3個の通信機の登録をすませた。
そしてその後、タツキとリッツは宿屋の食堂へと向かった。
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