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「......ばさ ……つば…つばさ!」 俺を呼ぶ声が聞こえる。毎日のように聞いてきた声。俺の大好きな声。 目を開けると瞼から光が差し込んできて、視界が真っ白に染まる。どうやら仰向けになっているようだ。 (ベッド… 病院か?) 「がはっ、ごほっっ」 声を出そうとすると、喉がつっかえてむせてしまう。 「つ、ばさ?」 声のするほうを見ると、真横に泣きはらした目をした聖夜が俺の手を握って座っていた。 「つばさ?!俺の事わかる?!」 声も体も動かせないので精一杯顔を縦に振る。 「よかったぁ……」 そう言ってまた聖夜の目から涙が溢れ出す。 「ばかっっ、お人好しなのはわかるけど無理しすぎ!どんだけ心配したと思ってんの!」 ばかぁぁと言いながらも、俺の手を握る力を強くしてきた聖夜を愛おしいと思う。 「ご、べん」 応えようと必死に声を絞り出す。 「無理しなくていいから!安静にしてて!先生呼んでくるから!」 と、病室を急いで飛び出していった。 (もう泣かせないって、誓ったのになぁ…) あんな大昔の約束なんて、聖夜は覚えてないんだろうけどさ。 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ それから俺は1週間ほど入院することになった。だけど検査入院との事で、命に別状はないらしい。声も3日くらいで出るようになり、1週間もすればすっかり元の元気な体に戻った。 あの時、泳いでいく俺を見た人がライフガードの人に知らせてくれたおかげで、すぐ救助できたそうだ。本当に感謝しきれない。 そうそう。入院とかやることないっておもってたんだが、聖夜が毎日お見舞いに来てくれてさ、ずっと一緒にいてくれたんだよな。溺れて良かったかもって思うくらい。不謹慎だけど。 そして海と入院とで、俺の濃い夏休みは終わったのだった。
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