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こんな泣いたままじゃ家に帰れないと思い、近くの公園に行く。そこのトイレで散々泣いた。 (なんか最近、泣いてばっかだな俺。) さっきの聖夜の言葉が、頭の中に張り付いて離れない。 「男同士とか無理。考えられない。」 そう言った聖夜の顔はどんな表情をしていたのだろうか。 聖夜への恋心を消したい。そう思うことは何度もあった。でも今日はその思いが一段と強くなったきがした。 落ち着いてきたので帰ろうと思い、鏡を見ると (はっ、ひっでえ顔。) 泣き腫らして赤くなった目に泣き跡が酷い。 (こりゃあ誰にあっても泣いたことバレるな。でも聖夜にだけはバレたくないな。) 鏡の中を改めてみると泣きはらしてひどい顔をした、平凡な男。 俺がもし女だったら、かわいい女の子だったら。 あいつの隣にいるのは俺だったのだろうか。女になりたいと思ったことはなかったが、心底女が羨ましいと思った。 (帰ろ。) 辺りはすっかり暗くなっていた。 ************************ 家に入ろうとすると 「あれ?翼くん?」 と声をかけられる。 「透さん!」 「今帰ったの?おかえりなさい!」 「あ、はい。た、ただいまです… 透さんも仕事終わりですか?」 泣き腫らした顔を見られたくなくてつい俯きがちになってしまう。 「うん、そうだよお、今日も疲れたなあー。」 「お疲れ様です。じゃあおやすみなさい。」 顔を見られたくなくて家に入ろうとする。 「あ!ちょっと待って!弁当!!」 「え、あぁ!」 朝、渡した弁当箱のことだろう。 「ほんとにありがとねえ、美味しすぎてびっくりしたよーー。あれを毎日食べてた幼馴染くんがうらやましいよ」 そう言ってカバンから弁当箱を取り出す。 「いえ…… そんな大したもんじゃないですよ…」 傷心の俺には嬉しすぎる言葉で、また涙が出そうになる。 「あ、でも洗って返した方がいいか!また明日返すよやっぱり」 「いや、いいですいいです!食べてもらっただけありがたいんで。」 と言って弁当を受けとろうとするとひょいっとかわされる。 「…?」 不思議に思っているとそのまま、ぐいっと抱き寄せられた。 俺は一瞬何が起こったか分からず、5秒後くらいに透さんの胸の中にいることに気がついた。 (ん?え?!俺、今この人に抱きしめられてんのか?!) 思わず上を向くと、透さんと目が合った。 胸がどきっと高鳴る。 (やっぱり綺麗な人だ…) そう思いしばらく見つめあっていると、はっと我に返り 「ちょっ、と、透さん?なんすかこれ…」 そう言うと、透さんは綺麗な顔でこう言った。 「そんな顔してる翼くん、放っておけないよ。」
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