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「えっ……」 確かにこの時の顔は泣いたことなどすぐ分かってしまうくらいひどい顔だったと思う。 「話だけでも聞くよ?」 と透さんに言われて、よしよしと頭なでられる。 「ふっっ…、ぐふっうっ、ぐすっっ」 頭をなでられた瞬間、もう出ないと思っていた涙が溢れでてきた。 「うん、つらかったねえ…よーしよーし」 そういって透さんは俺の背中をとんとん叩いてくれた。昨日初めてあったばかりなのに何故かその声は酷く安心した。 ************************ 「散らかってるけどごめんねー、どうぞはいって!」 俺は散々透さんの胸で泣いたあと、透さんの部屋に招かれた。 「ず、ずみません。ほんとにいろいろと…ぐすっ」 ほぼ初対面の人に醜態を晒してしまったことを今更後悔する。 「ははっいいのいいの。はい、お茶しかないけどどうぞ。」 透さんの部屋は俺んちと同じはずなのに、あまり物が置いてないせいか広く感じた。 「あ、ありがとうございます…」 そう言って、ダイニングテーブルの椅子に座る。 透さんも俺の向かいの席に座る。 「翼くんが泣いてた理由、当ててあげよっか?」 と透さん。 「幼馴染くんでしょ。」 「ブッッッ」 思わずお茶を吹き出してしまう。 「ふふっ、やっぱり当たり?」 と笑顔でいう透さん。 「な、なんでっ!」 (俺、そんな素振り見せたか?!もしかして俺ってわかりやすいのか?!) 「それにさ…」 「君ってこっち側の人間でしょ。俺、わかっちゃうんだよねそういうの。」 「こ、こっち側って…どういう…」 「…こういうこと。」 透さんは、椅子から立ち上がり身を乗り出して俺の顎に手をそえて自分の方へクイッと引きよせた。 目の前に透さんの顔が広がって、彼の瞳に俺が映る。 (うっわ、顔ちっか… もしかしてこれキスされるのか?うわぁああぁぁぁぁあぁ) そう思い思わずぎゅっと目をつぶると、 「ふっ」 と吹き出す透さん。 「ほんっとに隙だらけだなあ… そんなんじゃ俺に食われるよ?のこのこ部屋にもついてきちゃうしさぁ」 「くっ食う?!!」 (俺のことを食う?!ど、どういう食うだ…?) 「ほんとに分からない?」 とにやにやしながら透さんが言う。 「え、えっとわかりません…」 「えっちなことするって意味だよ♡」 「んなっ?!!」 俺の顔がゆでたこみたいに赤くなる。 「ははは!!!翼くんまっか!!!!」 と大爆笑する透さん。 「ちょっ、透さん!からかわないでください!!」 と俺が言うと、 「からかってないって言ったら?」 と今度は、真剣な顔で見つめられる。 「翼くんもこっち側、ゲイだよね?」 ごくっと俺は息を呑む。 「そ、それは… 」 俺が戸惑ってるあいだも目を離してくれない。 透さんの顔がさらに近づく。 (やっぱくそ顔面綺麗だな〜〜) キスされてもいいかと思ってしまった。 唇がくっつきそうになった時、脳裏に聖夜の顔が思い浮かび我にかえり、思わず透さんの胸を手でドンッと押してしまった。 「すっすみません!!俺には聖夜がっっ!あっ…!」 とつい口走ってしまい、手を口で抑える。 「やっぱりね…」 と透さんが微笑みながらいう。 「あ、あの気づいてたんですか?俺、そんなわかりやすいっすかね…」 「んー、なんとなくこっち側の子かなって思ったのは、引っ越しの挨拶に行った時。」 「そ、そんな前っすか?!」 「うん。さっきも言ったけどなんとなくわかるんだよね。こっちの界隅にはそういう人多くてね。翼くんもなんか感じなかった?」 たしかにあの時は透さんと俺が、同じ匂いがするような気がしたのだった。 (こういうことだったのか…) 「たしかに似ているようなそんな感覚ありました。」 「やっぱりか〜、あとは聖夜くんのお話した時かなー。彼女がいてってやつ。あの時すっごい悲しそうな顔してたんだよ、翼くん。それで、さっきの泣き顔見てほぼ確信したって感じかな。」 そうか。そんな前から気づかれてたのか。 (俺って結構わかりやすいやつだったんだな…) これからはもっと気をつけようと思った。 「いやーそんな分かりやすかったんすね… 一応これでも隠してるつもりだったんすけど…」 「わかりやすくてもいいんじゃない?俺は、翼くん見てて健気で素直ないいこだなーって思ったよ?」 「えっ?!そうすかね… 俺なんか聖夜の前じゃ全然素直になれなくて、そんな自分が嫌になりますよ…」 「好きな子には意地張っちゃうタイプかーー、やっぱかわいいよ翼くん!ほんとに食べちゃいたいな〜」 とニヤニヤしながら言ってくる。 「もう!だからからかわないでください!」 と顔を真っ赤にして言うと 「さっきも言ったけど、からかってないよ?俺は真剣に、翼くんのこと可愛いと思ってるし、翼くんがいいならほんとに抱いちゃいたいくらい!」 「だっっ抱く?!」 「うん!」 と、透さんは満面の笑みでいってくる。 「まあでも、無理やりとかはしたくないし幼馴染くんにぞっこんみたいだし?無理に手は出さないけどさ。寂しくなったらいつでも言ってね!俺はいつでも大歓迎!」 そう軽く言ってくる透さん。 「遠慮しときます!!! 」 と、つい強めに言ってしまう。 「でも透さんってそういう経験って豊富なんですか…?やっぱり…」 「え〜?そういう経験って〜?」 とまたまた楽しそうに聞いてくる透さんをじっと睨む。 (透さんってめっちゃ意地悪な人だ!)
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