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自分の部屋に戻ると、そのままベッドに倒れこんだ。
「び、びっくりした… 」
俺の心臓はさっきからずっとうるさいくらいに鳴っていた。確かに、押し倒された時は怖かったけれど、それと同時に、これからなにをされるか期待している自分もいたのだ。
(期待すんな。期待すんな。期待すんな…)
自分の頭の中で呪文のようにその言葉を思い浮かべる。
(深い意味なんてない。ただあいつが欲求不満だっただけだ。)
頭に、押し倒された時に一瞬見えた「雄」の顔がチラつく。
(忘れろ… 忘れろ…)
そう思っていると
プルルルルルルルルル
携帯の音が鳴った。携帯を見るとそこには「太宰透」
と表示されていた。
(透さん…)
「…もしもし?」
「あ、翼くん?どうだった?俺が教えたテクちゃんと実行した〜?」
能天気に話す透さんの声に、俺は少しだけ安心した。
「いや、透さんのテクは聖夜には通じませんでしたよ…」
「えー?そっかあ、ざんねーん。」
「手強かったっす。」
「…翼くんなんかあった?」
「…!」
「なんか声が暗いよ?」
「透さん、鋭すぎるんすよ… 」
「ふふっ、よく言われる〜」
「また、水曜日くらいにお邪魔してもいいっすか…」
「うん。もちろん!待ってるね。」
「はい…」
そう言って電話を切る。なんでもお見通しの透さんに は、頭が上がらない。少しだけ気分が軽くなった。
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