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「いつもそういう風に笑えばいいのに。」
「えっ?」
「透さん、美人だから余計かもしれないけどいつも作り笑いっていうか目が怖いんすよ。それ笑ってなくない?みたいな。」
「うーんと… 俺、もしかして貶されてる?」
「いや違くて!!そういう風にいつも笑えばいいのにって。俺、今の笑顔の方が好きっす。無理してわらうことないと思いますよ。」
「……………」
(なんか、臭いこと言いすぎたか?俺…)
透さんの反応がなくて戸惑う。
「翼くん…鈍いくせに生意気……」
口を尖らせていう透さんは可愛くて、なんだか前よりも壁がなくなった気がして俺はとても嬉しかった。
「へへっ、生意気ですんません!!」
「…… じゃあ、ちょっとだけ甘えさせてよ。」
「え??」
「だから!俺今日仕事で色々あって疲れてんの!だから甘えさせてって言ってんの!」
そういう透さんの顔はいつもよりほんのり赤い気がする。
「いいっすけど、なにすればいいんすか?」
「はぐ…」
「え?なに?もういっかい、うわぁっっ」
何を言ったのか聞き取れなくて、もう1回聞こうとした瞬間、腕を引っ張られて気づいたら透さんの胸の中にいた。
「ちょ、ちょ透さん?!」
「甘えさせてって言ったでしょ…」
甘えさせてってこーゆーこと?!と思いつつも、透さんの胸の中はあったかくてなんだか安心した。
(透さんがこんなんになるなんてよっぽど疲れてたんだな)
頭をゆっくりよしよしする。あの時の透さんがしてくれたように。
「こんなんでいいならいつでも相手するっすよ…」
透さんは何も言わなかったが、俺を抱きしめる腕の力が少しだけ強くなった気がした。
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かれこれ10分くらいこのままだ。
「透さん?これいつまでやるんすか…?」
透さんは答えない。
「透さん?もしかして寝てる…?!」
「と、透さーん?」
背中をたたいて起こそうとする。
「うーんんん」
「透さん?起きて??」
俺はすっかり油断していた。
ぺろっ
「んぁっ?!」
「ふふふふふ、やっぱり耳弱いね?翼くん♡」
(こっこのひと… 寝てるふりしてまた俺の耳舐めてきやがった…!!)
「な、なにするんすか!!変な声出ちゃったじゃないすか!!」
「えー?可愛い声だったよ??」
そう笑って、からかってくる透さんは、さっきまでのことは嘘だったのかと思うくらいいつもの透さんだった。
一時期は、あの弱気な透さんは、夢だったんじゃないかと思ったが、週に1度、「ハグタイム」と呼ばれる時間が恒例になったのはまた別のお話。
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