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「はっ?!!」 あまりにもびっくりして素っ頓狂な声を上げてしまう。 「はははっ、変な声!」 「と、泊まるって……」 「だって、翼くんこのまま朝迎えたら死んじゃいそうだもん」 「死ぬなんて大げさっすよ…」 「でも、もし隣から声とか聞こえてきたら立ち直れないんじゃない?」 その言葉にうっとなる。それは俺が一番の恐れていたことで、目を背けていたことだった。もし2人の最中の声が聞こえてきたら… 俺はどうなるんだろう。 「だから、おいでよ。翼くん。変な事しないとは言わないけど、本気で嫌がることはしないからさ」 「…… ほんとにいいんすか… なんか俺、透さんに甘えすぎな気がする…」 「俺がいいっていってんだから翼くんは胸張って甘えてなよ。で、来る?来ないの?」 「い、いかせていただきます…」 「ふふっ、いいこいいこ。」 そう言って透さんは頭を撫でてくれた。 「なんでっ、そんなにいい人なんすかぁあ…」 ほんとにいい人だ。俺はいつかこの人に恩返しをしなければならない。改めてそう思った。 ************************ 母さんにも連絡し、荷物をまとめて透さんの家にお邪魔する。 「うっわぁ涼しぃぃぃぃ」 俺の部屋と違ってクーラーの効いてる部屋はとても快適で、天国のようだった。 「翼くんの家、扇風機だったもんね〜」 「そうなんすよー。あーまじクーラー快適…」 「あ!そういえば、初恋の人の話きかせてくださいよ!」 「あーね!さっき約束してたもんね。でも面白い話じゃないから期待しないでね?」 そういう透さんの顔は切なげで、あぁこの人も辛い恋をしてきたんだなと本能的に感じた。 「う〜ん、どこから話そうかなぁ… 」 「俺がね、ゲイって自覚したのは中学生くらい。その初恋のやつを恋愛の意味で好きって気づいた時に。」 「その初恋の相手ってのは、中学からの同級生で親友だったよ。」 「親友…」 「そ。そいつもノンケでさ。幼馴染の女の子にすっごい片思いしてて。」 親友。幼馴染。片思い。俺に共通することばかりだ。 「俺にすっごい相談してきてさ、それも辛かった。くっついてなんかほしくなかったけど、そいつに辛い思いもしてほしくなかったから協力したりして。」 「でも俺ひねくれてるからさあ、絶対両想いってわかってたけど、それだけは絶対に教えてやりたくなくて… 」 そういう透さんの顔はいままでになく辛そうだった。 「そんなの… 当たり前っすよ。誰だって、好きな人が自分じゃない人と幸せになるなんて嫌だ…」 「でも、もし同じことになったらきっと翼くんは教えてあげると思う。前、翼くんと似てるって言ったでしょ?ほんとにそうなんだよ。お人好しなとこも、優しいとこも、健気なとこもさ。」 「いや、俺は、そんなんじゃないっすよ… ただ傷つきたくないだけで。」 「ふふふっ、そうやって自分のとこ下げがちなとことかね。」 「まあ、ネガティブなのは否めないっすねえ」 「まあそんなこんなでさ、俺が言わなかったからってくっつく時間が押しただけで、最終的にはくっついたわけ。それが確か、高校2年生くらい。結構前に高校の時荒れてたって言ったの覚えてるかな?あれ、失恋が原因でさ。思ったより精神的にきちゃって、無理やり好きでもない人とカラダ合わせて。そんなことやってないと、あいつと笑顔で毎日も顔合わせられなかった。」 あまりにも暗い透さんの過去に何も言えなくなる。 「まだ翼くんと会って間もない頃に、翼くんの泣きそうな顔みた時さ、あの時の俺と重なったんだよね。この子このままだと俺みたいになっちゃうって。放っておけなかった。」 「そうだったんすね…… 確かに俺、あん時ほんと限界で。透さんに感謝してもしきれないくらいで」 「いやーあの時は、数年前の俺見てるみたいでほんたにびっくりしたよ〜」 「ほんとにありがとうございました…… でも、透さんどうやって立ち直ったんですか?」 「んーー… 高校卒業して、完全に縁切ったんだ。それからは時間かな。連絡先も消したしどこに住んでるかも知らない。でも1年くらい前かな?結婚したって聞いた。それ聞いてもなんとも思わなかったから完全に吹っ切れてんだと思う。」 「縁……」 「1番諦めれる方法って結局それなんだよ。絶対叶わないのに近くにいるなんて病むだけ。」 そういう透さんは辛そうでとても見ていられなくて思わず抱きしめる。 「ちょっっ?!翼くん?!」 「透さんもこうやって俺のこと受け止めてくれましたよね。」 あの時を思い出して、同じように頭をよしよしとなでる。 「も〜う。」 そういうと透さんはそのまま俺をソファに押し倒した。 「うわぁっ」
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