12664人が本棚に入れています
本棚に追加
「⋯⋯もう、逃げません」
再び決意を伝えると、身じろぎをした永斗さんと向かい合わせになり、私の両肩に優しい重みが加わる。
「――来美。顔上げて」
ゆっくりとあげると、コバルトブルーの瞳がとろけるように細まる。
それを目の当たりにするだけで、感情が昂ぶって胸が苦しくなる。
好きなのに、何で苦しくなるんだろう。
想いが通じ合ってるのに、なんで切なくなるんだろう。
人を好きになるって不思議だ。
「来美は、とても魅力的だよ」
「⋯⋯?」
唐突に言った永斗さんに首を傾げると、彼は顔を寄せ、温かい指先で、私の輪郭を辿るように触れてゆく。
まるで、さっきの嫌な出来事を全て拭い去るように。
最初のコメントを投稿しよう!