10章 ハジメテと眼鏡と記憶と

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「⋯⋯もう、逃げません」 再び決意を伝えると、身じろぎをした永斗さんと向かい合わせになり、私の両肩に優しい重みが加わる。 「――来美。顔上げて」 ゆっくりとあげると、コバルトブルーの瞳がとろけるように細まる。 それを目の当たりにするだけで、感情が昂ぶって胸が苦しくなる。 好きなのに、何で苦しくなるんだろう。 想いが通じ合ってるのに、なんで切なくなるんだろう。 人を好きになるって不思議だ。 「来美は、とても魅力的だよ」 「⋯⋯?」 唐突に言った永斗さんに首を傾げると、彼は顔を寄せ、温かい指先で、私の輪郭を辿るように触れてゆく。 まるで、さっきの嫌な出来事を全て拭い去るように。
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