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「あ、変なところをお見せして、すみません。眼鏡落としてしまって」
「あ、あぁ」
一度立ち上がって頭を下げたものの、彼女はすぐさまずっと床にしゃがみこみ、視線を巡らせている。
かっこ悪いことに、僕はいつも遠巻きで見ていた彼女を目の前にして、言葉が詰まるほど動揺していた。
動くたびに、洗剤のようなシャンプーのような爽やかな匂いが香り
艶のある黒髪は、耳からこぼれて、小さな顔を包んでいて
本棚にかけている手は、守ってあげたくなるほど小さい。
そして、雪のように透き通った肌に嵌め込まれているのは、黒眼がちの大きな瞳。
キラキラした真っ黒な瞳は、とても澄んでいて夜空のようにも見えた。
僕は、一瞬で心を奪われた。
あぁ、何て、清らかなんだろう。
「ないなぁ⋯⋯吹っ飛んだからなぁ」
「――!」
焦った。
なんだ、ひとりごとか。
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