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その後ろ姿が、やけにいじらしく、心を揺さぶられた。
そして、階段を駆け上がっていくような、得体のしれない浮ついた感情が全身を走り出す。
女性に対してどこか冷めていると言われてきた僕は、こんな気持ちを感じるのははじめてだった。
落ち着け。
きっと眼鏡を取った顔が、少し可愛いから動揺しただけだ。
僕は、この前からおかしい。
高鳴る鼓動を静めるために胸に手を当てた。
それから、何度か深呼吸を繰り返したとき、棚と棚のホコリだらけの狭い空間でレンズが光っていることに気付いた。
あ、
あんなところに⋯⋯あったのか。
僕は、そこまで足を伸ばして、年季の入った不似合いなそれを拾い上げると傷が無いかどうか確認した。
傷はないが、真っ白だな。
ふっと笑みがこぼれた。
「ありましたよ」
そう声をかけると、驚いたようにパッと立ち上がった真島さんがこちらに寄ってきた。
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