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 カキンッ! カキンッ! ギリリリィ…… 激しい鍔迫り合いが互いの体力を削り続ける。 「貞義殿、其方も中々やりおるな」 傍から見れば互角のようだが、内情は違っていた。 元々刀使いに自信のない雅時にとっては、現在の戦局を保つのがやっと。 片や貞義は、秀吉に認められるほど刀の腕に長けている。 「雅時殿は私の後ろに控える者たちをお忘れか?」 貞義の背後にいる武将全員が弓を構える。 それと同時に、貞義が二人の立ち位置を反転させた。 「射よ!」 号令がかかり、矢が雅時の背を目掛けて放たれる。  追い込まれた雅時は、刀を抜いた。 右足で強く踏み込み、矢に自ら向かっていく。 スパッ! スパッ! 彼は華麗に刀で矢を払い除ける。 家来たちは予想だにしない出来事に腰を抜かし、 勝負は雅時と貞義との直接対決に縺れ込んだ。  二人は互いの様子を窺って牽制し合う。 それにより、距離を大胆に詰められないまま、随分と時が過ぎていった。 「待ちなされ。雅時殿と話がしたい」 貞義がそう呼びかけるが、雅時は応じない。 それどころか、雅時は一つの提案をした。 「貞義殿、武士は正々堂々と小細工無しで勝負すべきではござらなかったか?  話術も小細工のうち。ここは刀一本で決着をつけましょう」 「……そうでござるな。いざ、参らん」 朝日に照らされ、光る刀。駆ける二人の武士の姿が重なった。  木枯らしが地を這うように吹き抜ける。 二人は互いに背を向け、振り向かない。 「くっ、無念……」 一人が倒れた。貞義だ。 雅時は残る力を振り絞って刀を鞘へ納めた。 「無茶をしたか……」 また一人、倒れた。
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