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華やかに装飾されたパーティー会場を横目に、青白い顔をしたスーツ姿の男が駆け回っていた。
「佐々木さん、ありましたか?」
男はインカムのマイクで呼びかけたが、返事はない。
「聞こえていますか? 佐々木さん!」
男は再び呼びかけた。
すると、インカムからピピッと音がした。
「田中さん、やっぱりないですよぉ」
聞こえてきた間抜けな女性の声に、駆け回っていた男、田中の焦りは頂点に達した。
田中は渡り廊下を走り抜けた。今日はそこに幾つもの美しい絵が飾られている。どれも素晴らしいが、見ている暇はなかった。
すれ違うゲストに体が当たりそうになって、にらまれた。あとで口コミサイトに書かれるかもしれない。だが、知ったことではなかった。
もうすぐ始まってしまう。
田中は時計を見た。あと一時間だ。勢いよく部屋の扉を開くと同時に叫んだ。
「指輪は見つかったのか!」
挙式会場につながるスタッフルームで、佐々木がモゾモゾと動くのが見えた。髪をかきあげながら、床の上を舐めるように見渡していた。
もうすぐ結婚式が始まろうとしている。田中と佐々木は担当プランナーだ。ゲストが待合室でウエルカムドリンクを飲んだり、館内で写真を撮ったりしている。
そんな中、新郎新婦の指輪がなくなった。
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