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おめでとう
おめでとうだと..
「何がおめでとうだ!忌々しい!」
激しい音と共にデスクが揺れる。
写真立てが倒れ我に返る。
そこが職場の自分のデスクであることを思い出し慌てて顔を上げた。
案の定、部下達の視線が集中している。
チャーリー・アダムは一咳切って部下達に仕事を続けるよう伝えた。
いそいそと動き出す部下達を尻目に、倒れた写真立てに手を伸ばす。
結婚式の妻の写真だった。
白いドレスに身を包みブーケを持つ女性は美しく微笑んでいる。
ああ、アメリア。
君は相変わらず美しいがどうしてこの私を裏切ったりなんかしたんだ。
思わず瞼を閉じる。
教会でも神の御前で誓ったじゃないか
病める時も健やかなる時も私を愛してくれると。
いや、そんなものもしかしたら初めから無かったのかもしれない。
そもそもが親同士が決めた結婚であり、愛情など始めから...
「警部、チャーリー・アダム警部!」
振り向くと部下は青ざめた顔で走ってくるなり机を叩いた。
「大変です!」
「何だ、殺人事件か?」
「誘拐です!」
「それは大変だ!すぐに現場に出向こう」
「警部、落ち着いて聞いてください」
部下の慌てぶり、青ざめた顔、そして今の台詞。チャーリー・アダムは思わず制服のポケットに入れていた封筒を握り締めた。
ルツはいつも封筒を置いていく。
宛名は次の獲物。
握り潰された封筒の宛名は
チャーリー・アダム 私の名だった。
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