警部チャーリー・アダムの鬱積

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アルフォードと出会ったのはちょうど一年前 警察が指紋鑑定を正式に導入しだした頃の話だ。 そもそも、何故警察がこれ程までに民衆に嫌われているのか。 それはこの国の裁判制度にある。 昔から罪人は裁判にかけられ裁かれる。 それは当たり前のことだが、疑わしきを罰してきた黒い歴史があった。 犯人と思われる人物を捕まえ次々と罰していった司法だったが、ある日輸送船の船長が殺害されるという事件が起こった。 犯人は乗組員である 移民の子。 まだ未成年だった。 彼は無実を主張したがそれは裁判官には聞き入れられることはなく、三日後に有罪判決を受けた。彼は自殺した。 民衆は犯人の聴取が十分でないこと。 犯人が自殺したことに疑念と不満を抱いた。 そして、我々警察と呼ばれるものが出来たのだ。確たる証拠を突き付け、犯人を捕まえる我々に国民は大きな期待を抱いていた。 その期待が大き過ぎた と言い訳にはしたくはないが... 何せ毎日のようにスリや強盗が蔓延るこの都では人手も足りない。 いくらエキスパートと揶揄されても捜査は手探り、情報を集めるにも足で稼ぐしかない。 鑑定部署が出来た事は進歩ではあったが...それを証明するには時間もかかる。 これまたある事件が民衆の不満を爆発させた 事件は白昼、とある資産家の家にて起きた。 被害者は跡取りであり年の端八つに満たない幼子であった。 無惨に頭を銃で撃たれた幼児の姿に父親は発狂し、家はみるも無惨な結末を迎えた。 この事件の犯人をけして赦してはならない そう民衆も我々警察も犯人を憎んだ。 必死の捜査の上、浮上した犯人をとある警部は逮捕した。 その意外な犯人に民衆は激昂し、警察の捜査を怠慢だと非難した。 民衆の怒りは凄まじく、犯人は確固たる証拠で裁判にかけられたのにも関わらず 無罪 となった。 警察は国民からの信頼を失った。 警察もまた、国民を信用しなくなった。
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