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◇ ◇ ◇
「ねぇ、沖さん。次の週末、ここに泊めてもらってもいい?」
怜那が、帰り際に突然そんなことを言い出した。
「……俺は構わない、けど。おうちの人は? 外泊なんかして大丈夫なのか?」
(嬉しいよりもそちらの心配が先に立つのは、やっぱり俺はまだ怜那に対して教師の意識が強いんだろうか)
彼女はともかく、それは沖にとってはどうしても気になってしまう現実だった。
何しろ、出発点が『教師と生徒』なのだから。
今は違うとはいえ、完全に切り離して考えることはまだできないでいるのだ。
(いやでも相手は十八歳の女の子なんだから、教師とか生徒とか関係無くむしろこれが普通だよな? だっていい大人がずっと年下の、しかも未成年に対して自分の欲望最優先じゃあんまりだろ……)
沖の内心の葛藤など当然知らぬままに、怜那があっさり答える。
「大学入ってから知り合った中には一人暮らししてる子も多いからね。親の目がなくなって気楽に遊んでる子たちももちろんいるよ。でも、私も意外だったんだけど『寂しいから泊まりに来て欲しい』って子も結構いてさぁ。まぁ、まだ一人暮らしにもこっちにも慣れてないせいもあるとは思うんだけど」
彼女は外泊の言い訳などは前もってちゃんと用意していたらしい。
それはそうだろう。高校出たての女の子、しかも一人娘なのだから、親にしてみたら無条件で外泊などさせるわけもない。
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