第一章『Lesson』

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 沖 一彦(かずひこ)は、怜那がこの高校に入学するのと同時に新任でやって来た。今年二年目の、校内で最も若い教員だ。  見た目は優しそうな男前で背も高く、実際に親切で面倒見もいい。──多少、暑苦しいのも否めないけれど。  女子生徒にもそこそこ人気はあった。  ……何故かというと、如何にも四角四面で堅苦しい雰囲気を敬遠する層も少なくはないからだ。  あくまでも噂だが、ふざけてだか本気でだか彼に抱き着くように腕を組もうとした女子生徒がいたらしい。  彼女が沖に「年頃の女の子なんだから、教師相手でもそんなはしたないことはしちゃいけない。恥じらいを持ちなさい」と真顔で説教されたという話が、一部女子生徒の間では(まこと)しやかに囁かれていた。  真偽はともかく、沖はまさしく「あの先生ならあり得る」と皆が即納得してしまうような存在なのだ。 「『はしたない』って! しかも『恥じらい』! 死語じゃん。あんな若いのにさ。彼女いても『結婚するまで清いお付き合いを〜』とか言ってんじゃないのぉ」 「やだー、瀬里奈(せりな)ってばあ」 「ホントだったら気持ち悪いよ〜!」  きゃらきゃらと笑い合う、派手目な女の子たち。  髪型は多少違うが、同じようなヘアアクセサリーで全体の雰囲気が近い。完全に膝の出た短いスカートもお揃いのようだ。
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