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進級に伴うクラス替えから、もう二か月。
こういったやり取りは珍しくもない。ただ、互いに相容れないのは事実ではあるものの、敵対するほどのこともなかった。
タイプの似通った、──あるいは似せた仲間内で固まって、一見排他的なグループ。
しかし、話してみれば案外と気のいい面々は、明るく表面的に会話を繋ぐのも上手かったりする。
何かと背伸びしたがる彼女たちには、高校生にもなって意地悪したり仲間外れにしたりなんて「幼稚で格好が悪い」という共通認識があるらしい。
特に瀬里奈は一年生時、クラスの大人しい子に聞こえよがしに嫌味を言ってコソコソ笑い合っていたような連中に「みっともないことやめな!」といった場面に遭遇したことがあった。
怜那はクラスも違い、たまたま通り掛かっただけだったのだ。
しかし、陰ならいいというわけではなくとも、誰が通るかもわからない廊下で堂々とやる愚かさにまず呆れたものだ。
「なによ! アンタだって……!」
その子たちが悔し紛れに言い掛けたのに、瀬里奈が「あたしははっきり言うよ、今みたいにね。『イイ女』はせこいイジメなんてしねーんだよ!」と啖呵を切って黙らせたのは確かに格好よかった。
どう考えても、ノリが悪い、場の空気を乱すと相手を不快にさせても仕方のない対応だと、怜那自身わかってはいた。
しかし、教師にも、恋愛ごと自体にも何の関心もないというのが、嘘偽りのない本音なのだ。
和気藹々とした輪の中に入れないことを、気に病むような性格でもない。
それどころか、怜那は基本的に他人を気にせず単独行動を取っていた。
何でも一緒が美徳のような少女たちの中では、異端視されているのは間違いないだろう。
むしろ、こんな自分にも絡んで来ようとする彼女たちの社交性には、感嘆を覚えているくらいだった。
別に憧れはしないけれど、凄いスキルだとは認めざるを得ない。
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