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「怜那、テストどうだった?」
帰り道、偶然一緒になった野上 大翔が気軽に問い掛けて来る。
彼と怜那は家が隣同士で、所謂幼馴染みになるのだ。
校区のない私立で、二人の家は学校からの近さでは校内でも上から数えられる。
そのため、わざわざ約束するようなことはないが、会えば一緒に帰るのがお決まりだった。
「全部は返って来てないけど。英語と数学以外はフツーかな、いつも通り」
隣を歩く大翔は百八十超で、せいぜい平均程度の怜那より二十センチ以上背が高い。首を反らすようにして彼の顔を一瞬見上げ、怜那が淡々と答えた。
「……いつも通り、英語は良くて数学は、ってこと、だよな?」
さすがにずっと同じ学校で、共に過ごした時間も長い大翔は話が早い。
「まー、英語は得意だし大丈夫だろうけど。数学は? 悪いにもレベルがあるだろ」
「二十七点」
端的に数字を口にした怜那に、聞かされた彼の方が開いた口が塞がらない様子だ。
「……お前、なんでそんな平気で、──文系の数Ⅱって平均そんな低くないんじゃないのか? まさか五十点満点ってオチじゃない、よな?」
「中間テストで五十点満点とかあんの? 平均は、──七十六点だった、かな?」
「怜那。俺と一緒に勉強しよっか? 数学なら教えてやるよ」
「え~、パス。私、数学なんてどーでもいいもん」
「……」
あっさり返した怜那に、大翔はまるで毒気を抜かれたかのように黙り込んだ。
……もうすぐ家に着く。
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