野蒜(のびる)は古代の香辛野菜

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野蒜(のびる)は古代の香辛野菜

寒さが残る春先は,花や植物が芽吹いて来て,様々な春の『香 り』に満ち始めてくる。 梅の淡い香りから始まり,沈丁花のスッキリした香りも,この時季には欠かせない。 職場の花壇にも,色とりどりの花を植えているのだが,その隙間にやたら細長く浅葱(あさつき)を細くした様な『野 菜』でも『雑 草』でもない存在(・・)が顔を出していた。 草抜きをすると,正体が分かる。 根っこに栄養を蓄えたアイツは『野 蒜(のびる)』 本来根っこではなく,『鱗 茎(りんけい)』が肥大化しているのが正解なのだが・・ そんな野蒜は, 『ヒガンバナ科 ネギ亜科 ネギ属』の植物になる。おまけに多年草ときた・・ (ねぎ)大蒜(にんにく)(にら)も,ここに属しているのだ。 (ひる)とは,葱・大 蒜・韮などのネギ属の野菜の古称(こしょう)(古い呼び名)であり,古来は万葉の時代から食されてきた『食用野草』の1つだと知る。 蒜は辛くて,口が(ひいら)ぐから来た言葉から生まれた。 古くは『古 事 記』や『日 本 書 紀』にも, 蒜・・・野蒜を(うた)う和歌がある。 有名なのが(ながの) 意吉麻呂(いきまろ)の 『醤酢(ひしほす)(ひる)(つき)()てて鯛願(たひねが)ふ 我にな見えそ水葱(なぎ)(あつもの)』 と謳っている。 意味としては,酢味噌で和えた野蒜と鯛を食べたいのに,水葱(なぎ)(ミズアオイ)の汁物を見せないで欲しいと言っている。 万葉の時代の食を物語る一例として, 引用している。 現在の鰹のたたきの様に,鯛の(なます)に野蒜を 和えて食べていたのだ。キンキンに冷えた麦酒(ビール)と一緒なら,酒の肴にピッタリだと思う。 当時の万葉の時代では, 野蒜は貴重な香辛野菜で,若菜を茹でて醤酢(酢味噌に近いもの)を和えたり,魚の(なます)に和えて吸い物の具にもしていたという。 現代でも,野蒜はお味噌や酢味噌を付けて,そのまま食べる事もあれば,上の葉の部分を使って『ぬ た』としても,浅葱や葱の様に 味噌汁の具としても利用できる万能野菜だと思う。 他に何か無いかと調べてみたら, 野蒜を葉ごと利用し,胡瓜や長葱・リーフレタス,コチュジャンを使った合わせ調味料で和えた『セ ン チ ェ』にしてみるのも,良いかも知れない。 ちなみに『セ ン チ ェ』とは, 韓国語で『生 菜』生野菜で和えたものが 近いんだと思われる。人によれば一味唐辛子を使用したり,ワタシの様にチューブ入りのコチュジャンにお酢ときび砂糖(蜂蜜やオリゴ糖でも),ダシダを加えてセンチェを仕上げる人もいる。 本来はすり下ろした大蒜をいれるが, 休日前の晩か?休日じゃないと大蒜を使う料理はしない。 匂いの関係で・・・ 無臭にんにくがあればなぁと思ったりもする。何時もは大蒜なしで作るので,味にパンチがない・・弱いんだよね(苦笑) 休みが出来たら,野蒜が取れる穴場に行ってこようかな。お散歩がてら,新たな野草を探しに行くのも, また楽しい訳で・・・(笑)
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