第367回

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第367回

「みなさんどうも、こんにちはー! 今日も、神野真実(カミノマミ)先生の3分間クッキングのお時間がやって参りました! 真実(マミ)先生、どうかよろしくお願いします!!」 「よろしくね。チャッ、チャッと行きましょう、チャッチャッと。3分しかないんだからね」 「分かりました! では早速先生、今日は何をお作りしましょう?」 「今日はね。『世界平和』を創って行くわ」 「『世界平和』!?」 「ええ。『世界平和』よ。貴女ご存知?」 「い、一応知ってますけど……でも『世界平和』って、この番組なんかで作れるものなんですか?」 「あら。今まで私に料理できなかったものなんてあるかしら?」 「ありません」 「『世界』だって同じことよ」 「先生!!」 「じゃあまずね。『戦争』。『経済戦争』、『領土争い』、世の中色々あるけれど……目に余るほど『戦争』があっちこっちで起きてたら、やっぱり『世界平和』とは言い難いわね。まずこれを止めましょう」 「ど……どうやって?」 「3分しかないのよ。私が止めたものをあらかじめ用意させていただきました」 「止めたものを!?」 「そうよ。収録前に仕込んでおいたの」 「収録前に、世界各地の戦争を止めて来たんですか!? 真実先生が!?」 「ええ。3分しかないから。番組的に、先にやっとかないとマズイでしょう?」 「『戦争』を……止められるものなんですか!?」 「あら。私が今までキッチンという名の戦場で白旗を振ったことがあるかしら?」 「ありません」 「『戦争』だって同じことよ」 「先生!!」 「次に行くわよ。『戦争』が無くなっても、『争いの火種』は残っているわ。『貧困』、『差別』、『資源格差』、『疫病』……挙げたらキリがないわね。これも全て、私が消しておきました」 「えっ……えッ!?」 「少ぉし骨が折れる作業だったわね」 「もう無いんですか!? 世界中から、『争いの火種』が!?」 「そうよ。3分しかないからね。みなさんがご家庭で『世界平和』を創る時はね、1つ1つ手間暇かけて、丁寧に取り除いてあげてね」 「『争いの火種』を……消せるものなんですか!?」 「あら。私が今まで鍋を焦がしちゃったことあるかしら?」 「ありません」 「『争い』だって同じことよ」 「先生!!」 「では最後に、『平和』に欠かせないものを世界にトッピングして行きましょう」 「トッピング……」 「それは『笑顔』だったり、『安全』、『健康』……フフ。『世界平和』に必要なものって、他に何があるかしら?」 「先生。もう私、先生にできないことはないんじゃないかって思い始めましたよ……」 「あらやだ。それは違うのよ」 「でも……『戦争』をなくして、『争いの火種』を消して、みんなに『笑顔』や『安全』を与えたじゃないですか……。これ以上『世界平和』なんてどうやって……」 「そりゃ”今”はね」 「え?」 「だけどこれから先も、未来永劫『戦争』や『争い』がないとは言い切れないわ。この番組が終われば……世界はまた”動き出す”。私に止められるのは、せいぜい3分が限界……!!」 「先生……!?」 「だからね、いいこと? ちゃんと覚えておきなさいよ。これから先の『世界』を創って行くのは私じゃあない。なの。貴女が自分の手で、自分の『世界』を創っていかなきゃいけないのよ」 「先生!!」 「これが私から貴女へ贈る、メッセージ……!」 「真実先生……どうもありがとうございました。3分間クッキング、私、私まさか今週中に世界平和(こんなもの)が出来上がるなんて想像もしてなくて……。あれ? 何だか涙が……」 「来週は鯖の味噌煮を作って行きましょう」 「わあ美味しそう! 来週も楽しみですね!」 「それではまた来週!」 「3分間クッキングでした〜! さようなら〜!!」
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