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惨劇の始まり
(何があったんだっけ)
俺は座り込んだ姿勢のまま辺りを見回し、ぼんやりと考えた。
暗いが、どうにかそれらが見えた。木目の壁、吹き抜けの天井、窓の外に広がる自然豊かな木立。そして、血まみれで横たわる友人。
(え?)
どう見ても生きているとは思えない友人の姿に動揺し、それに気付く。赤黒いような、足跡。
(……思い出した!)
俺が写真仲間とこの貸しロッジに来たのは、今日の昼過ぎだった。山の頂上の開けた所にポツンと建っており、夜空の写真を存分に撮ってやろうと、皆、意気込んでいたのだ。
薄暗くなり始め、さあ、と気合を入れた時にそれは始まった。
「今、何か音しなかったか?」
中の1人が不意に言って、皆、耳をすますようにして手を止めた。
「……そうか?」
「気付かなかったけどな」
皆はそう言ったが、そいつはしばらく辺りを見回しながら耳をそばだてていた。そして、
「ちょっと見て来るわ」
と、階下に降りて行った。
俺達はそれを何となく見送ったが、1人がニヤリとして言った。
「映画とかじゃ、殺人犯が襲撃して来るとかいうのがあるよな」
それに、別の意見が出た。
「ゾンビとか悪霊って展開もあるぜ」
「どっちがましだろうな」
「殺人犯は取り敢えず生きてる人間だしな。何とかなりそうじゃねえか」
「どんな凶器を持ってるかにもよるなあ」
「吸血鬼だったら大丈夫だろ。俺達、昼間にしこたま餃子食ったし」
「吸血鬼がニンニクと十字架に弱いって、後からテレビの都合で付け足したデマらしいぞ。
というか、吸血鬼がそもそもデマだけどな」
「夢が無い事言うなよぉ」
俺達は笑いながら、吸血鬼を写真に撮るならどんな写真を撮るか、なんてバカ話をしていた。
その時、階下から物凄い悲鳴がした。
「うぎゃああああ!!」
俺達は動きをピタリと止め、続きを待った。
しかし、もう何も聞こえない。
「今の、何だ?何かあったのか?」
「侵入者?」
「……」
お互いの顔を見合い、俺達はゴクリと唾を呑んだ。
「行くか」
誰かが言って、俺達はそろそろと立ち上がった。
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