ゴミ、ゴミ、ゴミ。

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「お、俺は掃除をちゃんとやった!これからもやる、やる!だから、頼むううう!」  僕がやったことに気づいた人間は、あの老婆以外にもいるのかもしれなかった。それでも誰も、何も言わない。皆自分が可愛いからだ。生き残りたいからだ。――国を掃除する法律を作ったはずが、人間の中にさらなる汚物を作り出しているかもしれないなんて、なんたる皮肉であることか。  やがて、ゆっくりとベルトコンベアーが動き出す。同時に、ウイイイイン、という機械音と共に彼が運ばれる先の巨大な機械が動き出し、強い風でもって男の身体を吸い込み始めた。大きな吸い込み口は、真っ暗な闇になっている。吸われた先に何があるのかはわからない。それでも皆きっと同じことを考えたことだろう。  あれは、巨大な掃除機だと。  吸い込まれた“ゴミ”が、無事で済むはずがない、と。 「俺は、ゴミじゃない!うわあああああああああああ!」  両手両足を縛られ、ベルトコンベアーと吸い込みの二つに引っ張られた男が――己の運命に逆らえる筈もない。  彼はぽっかりと口を開けた掃除機に飲み込まれ――直後凄まじい断末魔が聞こえた。びしゃああ、と掃除機の口が大量の血で汚れる。男がどうなってしまったのか、なんて想像もしたくなかった。 「これにて、初回の“処分”を終了とする!」  兵士の男は、罪悪感の欠片もない声で断言した。 「次の“審査”は一週間後!次は、最下位二名を処分対象とする。皆、心して清掃・美化活動に励むように!」  ああ、と僕は心の中で、歪んだ笑みを浮かべるしかなかった。  逃げ場所なんて何処にもない。まだまだ地獄が終わる気配もない。僕はきっとまた、同じことをするだろう。 ――本当のゴミは、誰なのかな……。  ぬるり、と頬を伝った涙の意味は。もはや僕自身にもわからないことだった。
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