ゴミ、ゴミ、ゴミ。

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 その言葉にあちこちからわざめきが上がった。何で、どうして、仕事はどうなるんだ、家族は。そんな声がちらほら聞こえる。当然だろう、僕達は何の準備もないまま此処に呼び出され、携帯電話などの連絡手段も一切取り上げられているのである。家族は心配するし、やっている途中の仕事があった者も少なくないはずだ。  だが、僕は彼らのように声を上げることはしなかった。理由は簡単――何かを言う前に、おぞましい音が聞こえたからである。  つまり。銃の撃鉄を起こす音、が。  ダン!ダンダンダンダンダン! 「うわああああああ!?」  倒れる音。悲鳴。僕のすぐ横に立っていた、ひときわ大きな声で叫んでいた男がひっくり返った。胸を血塗れにして、口からはボコボコと血泡を吹いて痙攣している。他にも数名、特に騒いでいた者達が撃たれたらしい。静粛に!と説明していたおじいさんが声を張り上げる。 「いいですか、皆さん!これは法律です。私達は法律に則り、国民と、何より皆さんのための行動をしています。逆らう人は、公務執行妨害で即座に射殺が許可されていますよ!」  ああ、何も変わらないと思っていた世界は。僕達が無関心でいる間に、こんなにもおぞましく変容してしまっていたのだ。何十年か前までは、自衛隊の存続でさえどうのこうのと騒いでいた国が。いつの間にかこんなことで国民に銃を向け、殺すことが許される国になってしまったのである。  逆らえば、死あるのみ。彼らはそれを思い知らせるため、見せしめを行ったのだろう。  僕は震えて、動かなくなっていく男の死体を見つめるしかなかった。ああ、最近仕事が忙しくて、ほんの一週間ばかり部屋の掃除機をかけなかっただけなのに。少しばかり、漫画や書類、脱いだ服を放置していただけだというのに。何故そんな程度のことで、このような仕打ちを受けなければいけないのだろう。 ――死にたくない……!  唇を噛み締めて、僕は誓った。 ――生き残るんだ……どんなことをしても……!
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