ゴミ、ゴミ、ゴミ。

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 ***  彼らが僕達に命じたことは、とにかく一にも二にも三にも四にも清掃清掃また清掃、だった。  一ヶ月の間、僕達はそれぞれ独房のような部屋を与えられて生活する。といっても、部屋の中にはトイレも風呂もキッチンも完備されているし、ある程度食料も備わっている。ただ一日の決められた“集会”と“労働”の時間以外は、清掃目的(ゴミ捨て、掃除用具を借りるなど)以外で独房から出ることが許されないこと。自分の独房の清掃は自分で行わなければいけないことだけが定められているというだけである。  労働の内容が、収容所ないの公共利用施設の清掃活動であることは言うまでもないが――それよりも問題なのは、独房の清掃と清潔を維持することだった。  そもそも僕達が入った時点で、新品の独房が与えられるわけではない。どうやら僕達に掃除させることを目的として、意図的に泥やら砂やら食べ物の残骸やらで一定以上に汚れた部屋を貸与えているということらしい。僕達は独房に入れられてすぐ、部屋の中の凄まじい量のゴミや泥と格闘するハメになったのだった。掃除、というものに慣れていない人間はこれだけで十分な苦痛である。 「お前たちの最初の試練は、三日後である!」  僕達が入れられたD棟は、全部で十二人の収容者がいた。十二人をずらりと並べ、その監視員らしき銃を持った軍人がびしりと言った。 「三日後の零時丁度!貴様らの部屋の汚染度測定を行う!その時、一番部屋が汚かった者一名を、清掃義務を果たす気がない者=ゴミとみなして処分する!!生き残りたければ、死ぬ気で自室の清掃活動に励め!ちなみに共有部分の清掃をする労務時間もあるが、その時間に手を抜いた者も処罰の対象となるので心得るように!!」  処分。それが、正座でお説教を受けるようなことであるならばどれほど良かったことだろう。初日の虐殺を見てしまった者達は、嫌でも理解せざるをえなかった。  部屋を綺麗にできなかった者は、殺される。  生き残るためには、自分の部屋を他の独房の者達よりも綺麗になるまで清掃しなければならないのだ、と。 ――こ、殺されるのは最下位の人間だけだ。大丈夫。僕は大丈夫だ。
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