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他の収容者達はみんな、生き残るためのライバルだ。若い男女から年配者まで多種多様なメンバーが揃っているようだが、皆極力互いの顔を見ようとはせず独房に入った。僕もそれは同じだ。そして、独房に入った途端鼻につく悪臭にえづくことになるのである。
「う、うげぇ……!」
いくらなんでもこれはない、と思った。コンクリートの上に敷きっぱなしの布団は、中央部分が人の形に茶色く汚れている。死体でも置きっぱなしにしてあったのではないか、といった有様だ。加えて、天井近くまで積み上がったゴミの山。その殆どがお弁当箱などの残骸であり、あちこち腐った食べ物の欠片がこびりついていて酷い悪臭を齎していた。ゴミ袋に入っているものはまだ良くて、殆どが剥き出しのまま乱雑に放置されている状態である。
加えて、あちこちにごろごろと不自然に転がるペットボトル。見慣れた麦茶のラベルが貼られており、中身もそうなのかと一瞬思ったが――触った途端、ぞくっと背中が泡立った。恐る恐る蓋をした状態のまま匂いをかいでみて気づく。
これらは全て、飲み物ではない。――誰かがペットボトルに“排泄”した後である、と。
――ち、畜生!なんでこんなものまで、嫌がらせかよ!
僕は泣きたくなった。なんとなく悟ってしまう。政府の連中は僕達に掃除させる目的で、きっとどこぞのゴミ屋敷のゴミをそのままこの独房に切り分けて押し込んだに違いないと。何で少し掃除を怠っただけの僕達が、特殊清掃の技術も知識も何もないのに、こんな不衛生な環境で掃除を強要されなければいけないのだろう。
だが、泣いても喚いても何も解決しないのは明白である。ゴミを持っていく場所は指示されているし、ありとあらゆる清掃道具が貸し出されることも説明を受けている。とにかく三日間、まずこの汚くてどうしようもない部屋を少しでも住めるものにしなければいけない。というか、今夜からもう寝る場所がなくて困るのだ。こんな汚い部屋と布団で横になるなど、想像するだけでぞっとするのである。
――布団もなんとかしなくちゃいけないが、まずはこの積み上がったゴミを少しでも減らさないと……!地震でも起きたら一気に崩れて、生き埋めにされかねない!
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